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がんゲノム医療について

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がんゲノム医療とは
これまでのがん治療は、「殺細胞性抗がん剤」と言ったがん細胞だけでなく正常な細胞にも作用する薬が主たるものでありましたが、がん細胞の増殖に関わる特定の遺伝子異常に作用する「分子標的治療薬」が多く認可されるようになってきました。がんには複数の遺伝子異常が関わることが分かっており、それを少ない腫瘍組織から1遺伝子毎に調べていくには時間がかかります。そこで、一度に、癌に関わる複数の遺伝子の変異を調べることができる「がん遺伝子パネル検査」が開発され、日本では2019年6月より、「がん遺伝子パネル検査」が保険適用され、保険診療のもとでがんゲノム医療が受けられるようになりました。

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「がん遺伝子パネル検査」で遺伝子の変化が見つかった場合に、その遺伝子の変化に対して効果が期待できる薬剤や治験・臨床試験をデータベースなどで調べます。その遺伝子の変化に治療の効果があると考えられる薬剤の候補が見つかった場合、その薬剤の使用を検討します。国立がん研究センター・がんゲノム情報管理センター(C-CAT)の調査によると、がん遺伝子パネル検査に基づく治療到達率(提示された治療薬を投与した症例)は、9.4%(2,888/30,822症例)と報告されています。

がん組織>遺伝子の解析>適切な治療法の検討 図解

がんゲノム医療には、さまざまな
メリットだけでなく、デメリットもあります

がんゲノム医療では、がん細胞で起きている遺伝子の変化を調べます。調べた結果をもとに治療を行うため、より効果が高く、副作用が少ない治療法を選択できる可能性があります。しかし、現状ではがん遺伝子パネル検査の結果が治療に結びつく可能性は、約10%程度と高くはありません。また、①候補になる薬が見つかった場合も、薬剤を投与する基準に当てはまらない場合や治験・臨床試験の参加条件に合わない場合、②候補になる薬が見つかった場合も、治験の実施施設が遠方の為(例えば国立がん研究センターのみで実施している治験など)、通院が困難な場合など、がんの治療の恩恵に預かれない可能性もあります。

当院の特徴

病院外観画像

奈良県立医科大学附属病院は、2018年4月厚生労働省が指定する「がんゲノム医療連携病院」として認定を受け、院内のみならず院外からも「がん遺伝子パネル検査」を希望する多くの患者を受け入れを開始しました。そのような実績が評価され、2023年4月、奈良県立医科大学附属病院は奈良県内初の「がんゲノム医療拠点病院」に指定されましたた。がんゲノム医療拠点病院に指定されたことにより、自施設で専門家が集まって遺伝子解析結果を検討する委員会(エキスパートパネル)を開催し、治療法を検討し、レポート作成できるようになったことが大きな違いです。保険適用の対象となるのは標準治療終了後、または終了予定の進行がんや、標準治療のない希少がんなどの患者さんです。これまでも、そうした患者さんにがん遺伝子パネル検査結果を踏まえて、治験実施施設を紹介するといった対応は行っていましたが、今後は目の前の患者さんに対して、よりきめ細かく対応できるようなりました。当院では、奈良県のがん患者のがん遺伝子解析を積極的に実施することにより最新医療を享受できるために取り組んでいます。

遺伝性腫瘍について

「がん遺伝子パネル検査」が保険収載で行われるようになり、治療の選択肢を広げる目的で行った検査の結果から、遺伝性腫瘍の可能性があることもわかってきています。すなわち、がんになりやすい体質であるかどうかが、遺伝子を調べることで分かるようになりました。 遺伝性腫瘍はご本人だけではなく、ご家族のがんの発症にも関わります。そのため、「遺伝性腫瘍であるかどうか知りたいけど、家族や親族にどのようにして伝えたら良いのか?」「他のがんになる可能性あるのか?」「子ども達もがんになるの?」など疑問や将来かかるかもしれない病気について知ることが心理的な負担になるかもしれません。  遺伝カウンセリングはそのような疑問や不安の内容を傾聴し、正確な情報提供を行います。そして、今後どのような解決方法があるかを患者さまと一緒に相談する場とお考え下さい。 遺伝子診療は、遺伝カウンセリングを通して患者さまの気持ちに寄り添った医療につなげていきます。

「がん」の治療に役立つ情報が得られない可能性もあります